帰宅するなり「相談がある」といって私は由人の部屋に押し掛けた。
ちらりと私を見た由人は、まずは座れと促した――座れと、彼の膝の上に。
これは座らないといけないのか。
なんだろう、この甘えモードは・・・。昨日までの一件でもしや調子づいたのだろうか。
じりじりと背中に冷たいものが流れたような気がするが、由人が引く気配がない。
仕方なく、言われるままに座る。
私はそのまま後ろを振り返るようにして、
「・・・というわけで、体力つける為に運動した方がいいかと思ったんだけど」
相談を切り出した。
「体力?何のために?」
不思議そうに由人が首をかしげる。
「・・・私がすぐへばるからさ。・・・今日、しんどかった」
もう、大学で力尽きるかと思った。
「麻美に相談したんだけど、とてもじゃないけど私にできそうな運動がなかったから」
「例えばどんな?」
「マラソン」
「ああ、無理だな」
由人は考える時間を一秒もとらず即答した。
確かに私には無理だけれど、もう少し考えてほしかった。
「水泳」
「やらせない」
「だよね・・・」
予想通り。
そうだよ、いい有酸素運動なのに、由人の我侭な理由でできないのだ。
口惜しい。
「エアロビ」
「金がかかるから却下したろ」
「当り。・・・とまぁ、八方塞がりで。何かいい案ない?」
「適度に体力が付いて、カロリーも消費できて、楽で、金がかからない奴がいいんだろ?」
「うんうん」
あるのか、そんな運動!
期待に顔を輝かせて見上げると――由人はにやりと笑った。
なに、そのイヤな笑顔。
とても嫌な予感がした。
逃げ腰になりかかった私を、後ろからがっちりと由人が私を抱えこむ。
「あるだろ。・・・・・・・・・俺と毎日ヤればいいん・・・」
私は最後まで言わせず、思いっきり頭を後ろに向かってぶつけてやった。
ガツンと凄い音がする。私も、正直少し痛かったがそんな場合ではない。
怯んで私を抱きしめる腕が緩んだのを確認して、腕から抜け出すと、私は部屋を飛び出した。
「アホかーーーーーーーー!!!いっぺん死んで来い!」
お姉ちゃんは、そんな奴に育てた覚えはありません!
1階から聞こえる母の「あんたたち、姉弟喧嘩もほどほどにしなさいよー?」というのんきな声には、
「由人が一方的に悪いの!」という言葉と叩きつけて、私は自室に篭り、鍵を閉めて、さらに扉の前に物を置いてやった。
これでは入れまい。
教育には甘やかしすぎはやはりよくない。
躾が肝心だ。暫く冷たくしてやろう。少しは反省したらいい。
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