[ ←Back ][ 3-2:here ][ →NEXT ]
あね時々おとうと
03.一番いい運動 後編

 帰宅するなり「相談がある」といって私は由人の部屋に押し掛けた。

 ちらりと私を見た由人は、まずは座れと促した――座れと、彼の膝の上に。
 これは座らないといけないのか。
 なんだろう、この甘えモードは・・・。昨日までの一件でもしや調子づいたのだろうか。
 じりじりと背中に冷たいものが流れたような気がするが、由人が引く気配がない。
 仕方なく、言われるままに座る。
 私はそのまま後ろを振り返るようにして、
「・・・というわけで、体力つける為に運動した方がいいかと思ったんだけど」
相談を切り出した。
「体力?何のために?」
 不思議そうに由人が首をかしげる。
「・・・私がすぐへばるからさ。・・・今日、しんどかった」
 もう、大学で力尽きるかと思った。
「麻美に相談したんだけど、とてもじゃないけど私にできそうな運動がなかったから」
「例えばどんな?」
「マラソン」
「ああ、無理だな」
 由人は考える時間を一秒もとらず即答した。
 確かに私には無理だけれど、もう少し考えてほしかった。
「水泳」
「やらせない」
「だよね・・・」
 予想通り。
 そうだよ、いい有酸素運動なのに、由人の我侭な理由でできないのだ。
 口惜しい。
「エアロビ」
「金がかかるから却下したろ」
「当り。・・・とまぁ、八方塞がりで。何かいい案ない?」
「適度に体力が付いて、カロリーも消費できて、楽で、金がかからない奴がいいんだろ?」
「うんうん」
 あるのか、そんな運動!
 期待に顔を輝かせて見上げると――由人はにやりと笑った。
 なに、そのイヤな笑顔。
 とても嫌な予感がした。
 逃げ腰になりかかった私を、後ろからがっちりと由人が私を抱えこむ。

「あるだろ。・・・・・・・・・俺と毎日ヤればいいん・・・」

 私は最後まで言わせず、思いっきり頭を後ろに向かってぶつけてやった。
 ガツンと凄い音がする。私も、正直少し痛かったがそんな場合ではない。
 怯んで私を抱きしめる腕が緩んだのを確認して、腕から抜け出すと、私は部屋を飛び出した。

「アホかーーーーーーーー!!!いっぺん死んで来い!」
 お姉ちゃんは、そんな奴に育てた覚えはありません!

 1階から聞こえる母の「あんたたち、姉弟喧嘩もほどほどにしなさいよー?」というのんきな声には、
「由人が一方的に悪いの!」という言葉と叩きつけて、私は自室に篭り、鍵を閉めて、さらに扉の前に物を置いてやった。
 これでは入れまい。
 教育には甘やかしすぎはやはりよくない。
 躾が肝心だ。暫く冷たくしてやろう。少しは反省したらいい。

Webclap

[ ←Back ][ 3-2:here ][ →NEXT ]


Newvelランキングに参加中
↑ ページTOPへ戻る  ↑ Novel-Index  ↑ Home