我が婚約者殿と会話を交わした後のことである。
私は考えた末、自分だけで解決を図るのは難しいと判断を下した。
――果たして7歳とはどの程度の願いを胸に抱くものなのだろうか?
参考までに自分の7歳だった頃を思い返してみたのだが――激しく絶望した。
われながら、これは酷い。というものだったのだ。
(さ、さすがに、パンダになりたいは・・・・・・・)
な、ないわー!
世界征服以上にないだろう。
恐るべし、小学一年生だった私!
流石友達百人できるかなを恥かしげもなく歌える世代だ。
未来に対して期待を馳せすぎるにも程があるだろう。
この時点で私の脳細胞は恥か死(造語)により大量にあの世へ旅立った。
パンダより、世界征服の方がまだ実現可能だ、と思う。
そう思ったら、もう私は、パンダよりはありえる、世界征服以外の発想を思いつけなくなっていた。
ちらりと脳裏を掠めた6歳の時の願い事や、8歳の頃の願い事を心の奥深くに沈める為にそれ以上考えるのをやめたというのが正しいかもしれないが。
かんがえればかんがえるほど地雷が掘り起こされて・・・・・・いやいや、なんでもない。
こうして私の、世間的に見ればそれなりに明晰(あくまでも、それなり、だが)だと評価を受けていたはずの頭脳は、その機能を殆ど凍結させることとなった。自主的に。
* * *
ここは、やはり人の手を借りるべきだ。
自分で妙案を思いつけなくても、自分以外なら思いつけるかもしれない。
一日一回までなら宋矢君本人に聞いてもいい、と言われていたが、それは何もない状態で聞いて教えてくれるということではない。
予めどんな願い事かを推測し、それであっているかと確認を取れるだけだ。
で。あれば――
私は早速行動を開始した。
「ねぇ、我が友人、柚芽乃(ゆめの)さん。是非是非あなたにお知恵を拝借したいと思うのですが」
お時間頂けないでしょうか、と私は頼りになりそうと見当をつけていた友の袖をくいくいと引く。
「なんで」
我が友は考えるそぶりすら見せず、即座につれなくあしらってみせた。
間髪いれずとはまさにこのこと。
毛筋一本分くらいは考えるふりはして見せるのが、世知辛い世の中でも残っている人情というものじゃないの!?
ああ、切実な問題を抱えている友に対してこの仕打ち!なんという鬼女よ!
「流石、柚芽乃。その冷たさに痺れる・・・・・・」
半ば陶然と私はその言葉を紡いだ。
「憧れるって言ったら、あたしは縁を切るわよ」
あわや口に出すところだったので、私は慌てて口元に手を当てた。
そんな私に彼女は呆れ4割冷たさ6割の視線を向ける。
「馬鹿なことを言ってると、無視して去るけど」
視線に冷たさが増した。
例えるならば、さっきは0度の世界で、今はマイナス4度の世界といったところ。ホッカイロ一つじゃ勝てそうにない。
「ごめんなさい!な、なんでかというとですね。私じゃどうしても答えが出ない問いを抱えてるからです」
私は腰をどんどこ低くして、柚芽乃の顔色を伺った。
「だ、ダメ?」
はぁ、と柚芽乃はため息を一つついた。
「それはプライベートの関係のおハナシ?それともお家の関係のおハナシ?」
「どちらでもあり、どちらでもないような」
「どっちよ?」
「そ、宋矢君のこと」
彼女はソウヤ、と呟き、
「ああ。トムね」と納得したように頷いた。
彼女曰くのトムとは、我が婚約者殿の宋矢君のことだ。
トム・ソーヤからとったものらしい。
苗字が友井だからいけないのよ、と言われた。
トモイソーヤ。確かに、似ていなくもないが。かなり無理やりだ。
トム、と言うとなんだか別人のようだよなぁ、とぼんやり思っていたら、彼女がちっと舌打ちして、仕方ないと呟いた。
「聞いてやるわ。言いなさい」
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