もう一度目を覚ました時には、もうご主人様はあたしより先に起きて着替えも何もかもすませてしまった後のようだった。
少し残念だった。
でも、ご主人様の無防備な寝顔を思い出すと、なぜか胸がどきどきして苦しいから、やっぱり起きているご主人様のほうがいい。
熱が下がったはずなのにまだ胸が痛くなったり苦しくなったりする。
――ひょっとして、母が永久の眠りについたときの顔に無意識に重なるのだろうかと思う。母も綺麗な顔をしていたから。
余りはっきりとは覚えていないのだけれど、意識の深いところでは何かあるのかもしれない。
やれやれ、無意識というのはやっかいだ。あたしの自覚はないのに、体のほうには反応が現れるのだから。
あたしがベッドで身じろぎをすると、ご主人様は振り返ってこちらを見た。
そのままあたしのほうへ歩いてきた。
「起きたか」
「ええ」
あたしはゆっくりと身を起こした。まだ少しだるいが、昨夜に比べると段違いに体が軽い。
「・・・・・・熱は下がったようだな」
額に当てられた手は、もうあまり冷たく感じなかった。
「そうね。・・・・・・ご主人様、心配かけてごめんなさい」
「いや。・・・・・・でも、調子が悪いようならもっと前にいうように」
「はい」
いいこだ、と頭をなでるとご主人様はあたしを抱き上げた。
「汗で気持ち悪くないか?」
「気持ち悪いわ」
そう返すと「そうか」とご主人様はうなづいて、浴室のほうへ歩いていった。
あたしは薄物一枚の姿になり、また抱きかかえられて浴室へ放り込まれた。
ざぶざぶとお湯をふんだんに使って体中を磨きたてられた。
これも初めは凄く恥ずかしかったんだけれど、もうなれた。
(あたしは、お人形で、ペットだもの)
ご主人様は指先も細くて綺麗だ。
ご主人様の指先があたしの肌をすべり、髪を漉く様を見ているとうっとりする。
あたしは綺麗に洗われたあと、ご主人様の手で柔らかい布地の洋服を着せられて、髪がふわふわになるまで髪を乾かしてもらった。
ご主人様が仕事に行く時間になったので、あたしはご主人様をお見送りした。
魔王様が昼に働き夜に休む、従来の魔族とはタイプの異なるライフスタイルなので、ご主人様もそれにあわせて活動している。
魔族は夜行性のイメージがあったので、魔界に着てからあたしが面食らったことの一つだ。
夕方にご主人様が帰ってくるまで、あたしは一人で本を読んだり歌って遊んでいる。
その日ご主人様は帰ってきてからあたしと寝るまで、ずっといっしょに居てくれた。
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